皆さん、こんにちは！日本の未来の観光産業について深く掘り下げていくのが大好きな私にとって、「IR（統合型リゾート）」の話題は常にワクワクするテーマです。
IR、すなわち Integrated Resort は、単なるカジノではなく、国際会議場、高級ホテル、ショッピングモール、エンターテイメント施設が一体となった巨大複合施設のこと。これが日本の主要都市に誕生すれば、経済効果や国際競争力が飛躍的に向上すると期待されています。
これまで、多くの自治体がこのIR誘致に名乗りを上げ、熾烈な競争を繰り広げてきました。この記事では、IR誘致を巡るこれまでの熱い戦いの歴史と、現在「候補地」として残っている、あるいは今後の可能性を秘めた地域について、私の視点から徹底的に解説していきます。
1. IR誘致レースの現状：勝利の栄光は大阪へ
IR誘致のプロセスは、日本政府による厳しい審査のもとで行われてきました。当初、複数の主要都市が立候補を検討しましたが、最終的に政府から最初に認定を受けたのは大阪でした。
認定第1号：大阪府・大阪市（夢洲）
大阪は、地理的な優位性、インフラ整備の計画の具体性、そして何よりも地域経済への強いコミットメントが評価され、2023年4月に誘致が正式に認定されました。パートナー企業は、MGMリゾーツ・オリックス連合。
IRが建設される場所は、**大阪市此花区の人工島「夢洲（ゆめしま）」**です。ここは2025年大阪・関西万博の会場とも隣接しており、大阪の未来を象徴する地域となります。
候補地 認定状況 主な理由 特徴
大阪（夢洲） 認定済 具体的かつ実現性の高い計画、経済効果への期待 関空・伊丹空港からのアクセス、万博とのシナジー
和歌山県 辞退/撤回 資金調達の難航、計画の不確実性 関西圏での第2候補としての可能性
横浜市 撤回 市長交代による方針転換、住民の反対意見 首都圏の圧倒的な経済規模と人口
長崎県 申請済/保留 地域の観光資源との融合、海外からのアクセス ハウステンボス周辺の活用、地域活性化
2. 候補地レースから撤退した「大物」たち
IR誘致は地域の経済を大きく変える夢のある話ですが、その反面、ギャンブル依存症対策や治安維持、そして巨額の初期投資が必要になるため、住民からの反対意見も少なくありませんでした。
私が特に注目していた**「大物候補地」**が、次の理由でレースから撤退しました。
A. 横浜市：首都圏の巨大な可能性と撤回
横浜は、首都圏という巨大な市場を背景に、当初は大阪と並ぶ最有力候補と目されていました。山下埠頭への誘致構想があり、経済界からの期待も非常に高かったのです。
しかし、住民の反対運動が活発化し、2021年の市長選挙で誘致反対派の候補者が当選したことで、横浜市はIR誘致の方針を白紙撤回しました。
B. 和歌山県：資金調達の壁
和歌山県は、大阪とは異なる独自の観光資源を持つ地方都市として、IRによる地域活性化を目指していました。しかし、誘致計画の過程で、パートナー企業との間で求められていた資金調達の確実性を示すことができず、最終的に申請を断念せざるを得ませんでした。地方自治体が巨額プロジェクトを遂行する上での難しさが浮き彫りになった事例と言えます。
3. 次なる候補地はどこだ？長崎の挑戦
現在、大阪の次に認定を目指しているのが長崎県です。
長崎県は、佐世保市のハウステンボス周辺を候補地とし、地方都市ならではの魅力を活かしたIR構想を進めています。
長崎のIRは、地域特有の歴史や文化、そしてハウステンボスのヨーロッパ風な景観と融合させることで、アジアの富裕層や観光客に「日本の地方」の魅力を発信する役割を担うことになります。
長崎県のIR計画の強み：
地域分散型観光: 大都市集中ではなく、地方経済の活性化に貢献。
国際アクセス: 長崎空港や福岡からのアクセスも比較的容易。
既存施設との連携: ハウステンボスという強力なテーマパーク施設が隣接。
ただし、長崎県の計画については、政府から資金面や経営安定性についてさらなる精査を求められており、認定にはまだ時間がかかる可能性があります。日本政府は、最大3箇所までのIR認定を計画していますが、現状は「大阪1箇所、長崎保留」という状態です。
4. 候補地選定の重要基準（Criteria）
なぜ、これらの都市がIR誘致に名乗りを上げ、また政府は特定の都市を選定するのでしょうか？私が考えるに、最も重要なのは以下の点です。
誘致に不可欠な5つの要素
国際アクセス: 海外からの観光客が容易に到着できる体制（国際空港、港湾）が整っていること。
広大な土地: 巨大な複合施設、ホテル、会議場を建設できる十分な土地面積が確保できること。
経済波及効果: 地域経済だけでなく、日本全体の観光・雇用・MICE（国際会議等）に貢献できるポテンシャル。
ギャンブル依存症対策: 厳格で具体的な対策とセキュリティ計画が提示されていること。
地域住民の理解: 政府や自治体が一丸となってIRのメリットとデメリットを住民に説明し、合意を得ていること。
特に「地域住民の理解」は、横浜の事例からもわかるように、計画の実現性を左右する決定的な要素となります。
テーブル2：IR認定審査における重要な視点
審査項目 概要 候補地への影響
財務健全性 事業者が提案する資金調達計画の確実性 和歌山が断念した最大の理由
MICE機能 国際会議場（コンベンション）の誘致能力 カジノ依存ではない収益源の確保
交通インフラ 既存の公共交通機関との連携、アクセス整備 夢洲（埋立地）の課題であり、投資が必要な分野
自然災害対策 地震や津波、液状化に対する具体的な対策 埋立地である夢洲にとって重要な要素
5. 経済効果と今後の展望について
IRが一度稼働すれば、その経済効果は計り知れません。雇用創出はもちろん、国際的なMICEイベントが増えることで、日本全体のビジネス機会が拡大します。
IRの経済効果について、ある日本の観光経済学者は次のように述べています。
「IRは単なるカジノの収益構造ではない。世界トップクラスのMICE施設と高級ホテルが一体となることで、これまでアジアの他国に流れていた高所得層のビジネス客や観光客を日本に取り戻すことができる。これは、長期的で持続可能な観光立国を実現するための重要なピースだ。」
私は、大阪IRの成功は、今後の日本におけるIR誘致の「モデルケース」になると見ています。もし次の誘致フェーズが始まるとすれば、長崎に加え、過去に有力候補として検討していた北海道（苫小牧や釧路）などが再び名乗りを上げる可能性もゼロではありません。
しかし、政府は非常に慎重な姿勢を崩していません。日本のIR誘致レースは、量より質を重視し、地域経済に真に貢献できる、財務的に盤石な計画のみが選ばれることになるでしょう。
最後に
大阪のIR開業に向けた動きは着実に進んでいます。これは日本の観光産業にとって大きな一歩です。次にどの地域が認定されるのか、それとも政府が「2カ所目」の認定を見送るのか。今後の動向から目が離せませんね！
IRカジノ候補地に関するFAQ (よくある質問)
Q1: 日本ではなぜカジノではなく「IR（統合型リゾート）」と呼ぶのですか？
A1: カジノはIRを構成する一部にすぎません。日本政府は、観光、ビジネス、文化交流を目的とした複合施設（ホテル、会議場、商業施設）の誘致を重視しており、ギャンブル依存症問題を懸念する国民感情に配慮し、「統合型リゾート」という名称を使用しています。
Q2: 大阪のIRはいつオープンする予定ですか？
A2: 現時点での目標は2030年秋頃の開業を目指していますが、建設スケジュールや許認可の進捗により前後する可能性があります。
Q3: 誘致レースから撤退した横浜や和歌山が、将来再挑戦する可能性はありますか？
A3: 横浜市は現在の市政の方針としては誘致を行いません。和歌山については、資金調達の課題を克服すれば理論上は可能ですが、政府が「次期申請」の枠を設けるかどうかが鍵となります。現行の枠組みでは現時点での再挑戦は難しいでしょう。
Q4: IRが建設された場合、日本の治安は悪化しませんか？
A4: 日本のIRでは、厳格な入場規制（日本人からの入場料徴収、回数制限など）や、最新の監視技術が導入される予定です。また、政府はギャンブル依存症対策基本法に基づき、依存症対策を最優先事項としており、治安悪化を防ぐための厳重な管理体制が敷かれます。