皆さん、こんにちは！旅と経済の動向を追いかけるのが大好きな私にとって、日本の「カジノを含む統合型リゾート（IR）」の誘致競争は、長らく目が離せないテーマでした。
「カジノ」という言葉を聞くと、賛否両論、様々な意見が飛び交います。しかし、IRは単なる賭博施設ではなく、国際会議場や高級ホテル、ショッピングモール、エンターテイメント施設などが一体となった巨大な観光複合施設です。国はこれを地域の経済活性化の切り札と位置づけてきました。
かつては全国で数十もの自治体が手を挙げると噂された誘致競争。しかし、様々なハードル（莫大な初期投資、地域住民との合意形成、コロナ禍の影響など）を経て、最終的に国から地域整備計画の認定を受けたのはわずか2つの地域となりました。
この記事では、日本のIR誘致の歴史を振り返りつつ、かつて有力視された「候補地」の動き、そして現在認定を受けて計画が進んでいる2つの場所について、Friendlyな視点から詳しく解説していきます。
1. かつての熱狂と、突然の撤退劇
日本のIR推進法が施行されて以降、多くの自治体が誘致に強い意欲を示しました。特に、国際的な競争力を持ち、高い経済効果が見込める大都市が中心でした。
〇 誘致の有力候補として名乗りを上げた主要な地域
地域 概要と主な動き 撤退・継続
横浜市 (神奈川県) 人口が多く、立地条件も抜群。山下ふ頭への誘致を計画し、海外オペレーターも強力に関心を示していた。しかし、住民の反対運動が強まり、市長選の結果を受けて計画は撤回された。 撤退
東京都 お台場・臨海副都心エリアが有力視されていたものの、都は最終的に誘致を断念。オリンピック後の土地利用計画など、優先すべき課題が多かったとされる。 撤退
北海道（苫小牧市・釧路市） 観光資源の豊富さから注目されたが、積雪地帯特有のインフラ整備の難しさや、地域経済規模の課題から、最終的に断念。 撤退
名古屋市・愛知県 中部圏の経済浮揚のため検討されたが、初期投資の大きさや住民理解の調整が難航し、積極的に誘致に動くことはなかった。 撤退
このように、初期段階で有力視された大都市の多くが、莫大な資金調達の難しさ、そして「ギャンブル依存症対策」や「治安悪化への懸念」といった住民サイドの強い反対意見に直面し、誘致を断念せざるを得ませんでした。
2. 最終選考を勝ち抜いた2つのIR候補地
厳しい選考プロセスを経て、最終的に国から地域整備計画の認定を受けたのは、西日本の2つの地域です。両者とも、地域経済へのインパクトと、海外からの集客力に大きな期待が寄せられています。
認定地リスト
大阪府・大阪市
長崎県・佐世保市（ハウステンボス）
① 大阪府・大阪市：西の玄関口に建設される巨大リゾート
大阪は、地理的な優位性（関西国際空港、高い人口密度）と、2025年大阪・関西万博後の土地利用を見据えた計画で、最も早く誘致に名乗りを上げ、強力に推進してきました。
建設予定地: 夢洲（ゆめしま）
事業主体 (オペレーター): MGMリゾーツ・オリックス連合
特徴: 万博後のレガシーとして、アジア屈指の観光拠点を目指しています。計画は極めて大規模で、投資額は約1兆800億円に上るとされ、日本のIRの「顔」となる存在です。
② 長崎県・佐世保市：地域経済の起爆剤となるIR
長崎IRの計画地は、観光テーマパークのハウステンボスに隣接する場所です。大都市圏ではないものの、九州全体の観光資源の豊富さと、既存のハウステンボスとのシナジー効果が期待されています。
建設予定地: ハウステンボスに隣接する敷地
事業主体 (オペレーター): カジノ・オーストリア・インターナショナル
特徴: ヨーロッパのIR運営実績を持つ事業者を迎え、地域色を活かした国際的なリゾートを目指します。大阪と比べて規模は小さいものの、九州の経済圏に大きな影響を与えることが期待されています。
3. なぜこの2地域だけが成功したのか？
多くの自治体が撤退する中、大阪と長崎が認定を勝ち取った背景には、いくつかの共通要因があります。
〇 成功を分けた要因
政治的な強いリーダーシップ: 地元自治体の首長が、長期間にわたり一貫して誘致の旗を振り続けました。特に大阪では、万博とIRを一体で推進する強い意思が示されました。
既存インフラとの連携: 大阪は万博後の夢洲という広大な土地を確保し、長崎はハウステンボスという観光施設と連携できる場所を選定しました。土地確保の問題が比較的クリアだったのです。
住民合意形成の努力: 大都市圏で誘致に失敗した事例と比較し、両地域とも、地域の経済界や住民に向けて、依存症対策や地域への還元策を丁寧に説明する努力が続けられました。
【表】大阪IRと長崎IR 比較テーブル
項目 大阪 IR (夢洲) 長崎 IR (ハウステンボス隣接地)
投資規模 (概算) 約1兆800億円 約4380億円
主要オペレーター M G M / オリックス連合 カジノ・オーストリア
ターゲット アジア全域及びグローバルなMICE需要 九州・アジア地域の富裕層、観光客
コンセプト 「日本文化の発信と国際交流の拠点」 「地域資源を活かしたヨーロッパ風リゾート」
開業目標時期 2030年代前半 2030年代前半
4. 専門家の声と今後の課題
IR誘致は、地域の未来を大きく左右する一大事業です。この計画の重要性について、各方面からは期待と懸念の声が上がっています。
引用：地域経済活性化への期待
「IRは単なるカジノではなく、海外からの観光客を定着させるための『装置』です。特に大阪は万博後のインフラを活用し、アジアの富裕層やMICE（国際会議）需要を確実に捉える必要があります。しかし、物価高騰や円安の影響で建設費が当初の試算から大幅に膨らむ可能性があり、計画の実行には柔軟な対応と長期的な視野が求められます。」
— (架空) 日本観光経済研究所 上席研究員
私が考える今後の課題 (リスト)
建設費の高騰と工期の遅延: 世界的な資材価格の高騰や円安の影響で、当初の事業計画通りに進められるかどうかが最大の懸念です。
依存症対策の確立: 開業までに、地域住民が安心して利用できる厳格なカジノ利用規制および依存症対策の仕組みを構築する必要があります。
地域経済への波及効果: カジノ以外のホテルやMICE施設が、どれだけ地域の中小企業や雇用創出に貢献できるかが、成功の鍵となります。
5. まとめと私の視点
長年の議論と競争を経て、日本のIR誘致計画は、大阪と長崎という2つの具体的な候補地に絞られました。
私は、IRが持つ経済的なポテンシャルを信じていますが、過去に誘致を断念した地域があったように、住民の理解と、環境への配慮なくして成功はありえません。
現在の2つのプロジェクトが、単なる「カジノ」ではなく、日本が世界に誇れる「統合型リゾート」として確立し、地域に真の恩恵をもたらすことを心から願っています。
IR誘致に関するFAQ (よくある質問)
Q1. カジノはいつから利用できるようになりますか？
大阪IRも長崎IRも、当初は2020年代後半の開業を目指していましたが、コロナ禍や建設費高騰の影響を受け、現在は2030年代前半の開業を目指し計画が進められています。正確な開業時期は、今後の建設状況によります。
Q2. 他の自治体がこれから誘致に名乗りを上げる可能性はありますか？
現行の法律に基づいた枠組みの中では、国が認定できる整備計画の数は最大3か所と定められています。残りの1枠を巡って、今後新たな自治体が名乗りを上げる可能性はゼロではありませんが、既に一度撤退した大都市圏が再検討するには、非常に高いハードル（住民理解、資金調達など）が存在します。
Q3. カジノの入場制限はありますか？
はい、日本国民および国内居住者に対しては、ギャンブル依存症対策として厳格な入場制限が設けられる予定です。入場回数の制限や、入場料の徴収（海外からの旅行者は無料、国内居住者からは徴収）が計画されています。
Q4. 日本のIRはラスベガスやマカオと同じですか？
日本のIRは、カジノ収益が全体の収益の一定割合を超えないよう、非カジノ施設（ホテル、MICE、エンタメ）の強化が法律で義務付けられています。これは、単純なカジノ施設ではなく、家族連れやビジネス客も利用できる「国際観光拠点」を目指すという点で、ラスベガスやマカオの一部施設とは性質を異にしています。