皆さん、こんにちは！経済動向ウォッチャーの私です。
カジノと聞くと、華やかなエンターテインメントのイメージが強いですが、その裏側にある「収益」こそが、国や地域の経済を大きく動かすエンジンとなっています。近年、日本でも統合型リゾート（IR）の整備が進められる中で、カジノが生み出す経済効果、特にその収益構造に対する関心は高まる一方です。
では、世界を舞台に展開されるカジノビジネスは、一体どのようにして巨額の富を生み出しているのでしょうか？今回は、私がカジノの収益の核心である「GGR」の仕組みから、IR（統合型リゾート）モデルにおける収益の多角化、そして日本の将来的な展望まで、深く掘り下げて解説していきます。
1. カジノ収益の核心：GGR（グロス・ゲーミング・レベニュー）とは？
カジノ事業の収益を語る上で欠かせないのが、「GGR (Gross Gaming Revenue)」、日本語で「カジノ総収益」と訳される指標です。
GGRは、私たちが普段考える売上高とは少し定義が異なります。簡単に言えば、**「顧客が賭けた金額から、顧客に払い戻した賞金を差し引いた、カジノ側の手取り総額」**を指します。
項目 説明
ベット総額 (Total Bets) 顧客がカジノに投じた総金額
賞金総額 (Total Payouts) カジノが顧客に払い戻した総金額
GGR (カジノ総収益) ベット総額 – 賞金総額
このGGRこそが、カジノの真の市場規模を示す指標であり、納税額の算定基準にもなる「生命線」なのです。GGRが大きいほど、その地域のカジノ産業は活況を呈していると判断されます。
なぜGGRが重要なのか？
GGRは純利益（Net Profit）ではありません。GGRから、運営コスト（人件費、施設維持費、マーケティング費）、そして最も大きな要素である「税金」を引いたものが、最終的な事業者の利益（EBITDA）となります。
特に、カジノ税は一般的に非常に高率です（多くの地域で20%～40%）。そのため、GGRを最大化することが、地域社会への貢献（税収）と、事業者自身の利益確保の両立に不可欠となります。
2. 世界のカジノ収益比較：マカオとラスベガスの違い
世界のカジノ収益構造は、地域によって大きく異なります。私はこの違いを分析することが、日本のIRが目指すべき方向性を見極める鍵だと考えています。
主要なカジノ市場であるマカオとラスベガスの収益源を比較してみましょう。（参考：新型コロナウイルス感染拡大前のデータに基づく、一般的な構成比）
収益源 マカオ (アジア市場中心) ラスベガス (米国市場中心)
ハイローラー/VIP部門 約65%以上 約30%以下
マスマーケット/一般客 約35%以下 約70%以上
非ゲーミング収益 (ホテル/MICE/飲食) 低い (約10%未満) 高い (約60%以上)
収益構造から見える戦略の違い
マカオ型 (VIP重視): 高額な賭けを行うVIP顧客（ハイローラー）からの収益に大きく依存しています。GGRにおけるVIP比率が高く、非ゲーミング（ホテルや飲食）の収益比率は低いのが特徴です。収益額は巨大ですが、経済状況や政策変動に対するリスクが高い構造でもあります。
ラスベガス型 (マスマーケット・IR重視): 一般顧客からの収益と、ホテル、レストラン、エンターテインメント、国際会議（MICE）といった非ゲーミング部門の収益が支柱です。このIRモデルは、景気の変動に強く、安定した収益源を確保しています。
3. IR（統合型リゾート）における収益の多角化
日本のIRは、ラスベガス型の「IRモデル」を踏襲することが明確になっています。これは、カジノ収益（ゲーミング）だけに頼らず、非カジノ収益とのバランスを重視する戦略です。
カジノ収益の主要な源泉（ゲーミング部門）
カジノのGGRを生み出す具体的なゲームは多岐にわたりますが、収益に占める割合が大きいのは以下の通りです。
テーブルゲーム: バカラ（特にアジア圏で圧倒的）、ブラックジャック、ルーレット。
電子ゲーム機: スロットマシン、ビデオポーカー。
ポーカールーム: レーキ（手数料）が収益源となる専門ルーム。
IRを支える非ゲーミング収益（リスト）
IRの安定経営において、カジノ収益の変動を補填し、安定したキャッシュフローを生み出すのが以下の非ゲーミング部門です。
宿泊施設（ホテル）: ラグジュアリーからカジュアルまで、多様な客層をターゲット。
飲食事業: 世界的なシェフが監修する高級レストランからフードコートまで。
小売・商業施設: ブランドショップ、免税店、お土産屋など。
エンターテインメント: シアター、コンサート、クラブ、アトラクション。
MICE施設: 国際会議場、展示場。これはビジネス客を呼び込み、平日や閑散期の稼働率を上げる重要な役割を果たします。
スパ・ウェルネス: 高額利用が見込めるリラクゼーション施設。
＜専門家の視点＞
IR開発専門家であるジョン・D・スミス氏は次のように指摘しています。
「現代のカジノは、もはや単なるギャンブル施設ではありません。特にアジア圏の新しいIRは、ゲーミング収益が全体の50%から60%を占めるのが理想的とされています。非ゲーミング収益を充実させることで、地域経済に深く貢献し、収益のボラティリティ（変動性）を抑えることができるのです。」
4. GGRから最終利益へ：収益を左右するコスト要因
私たちがIRの経済効果を評価する際、GGRの額面だけを見て「儲けが大きい」と判断しがちですが、実際には様々なコストが差し引かれます。
カジノ事業者が最終的に手にする利益を左右する主なコスト要因を見てみましょう。
コスト要因 説明 影響度
カジノ税 GGRに対して課税される税金。場所により税率は大きく異なる (例: シンガポール約20%、ラスベガス約6.75%＋各種フィー)。 最大
運営コスト 人件費、電気代、セキュリティ、施設維持費。大規模IRでは数千人規模の人員が必要。 大
ジャンケット手数料/コミッション VIP顧客を連れてくる仲介業者（ジャンケット）に支払われる手数料。マカオではこれが高コスト原因だった。 中～大
設備償却費 建設に投じた巨額の初期投資（数十億ドル規模）の償却費用。 大
これらのコスト構造を考慮すると、GGRがいくら大きくても、税率や運営効率が悪ければ、事業者の収益は大きく目減りしてしまうことがわかります。
例えば、日本のIRで想定されるGGRからのコスト配分の一例を見てみましょう。
項目 GGRに対する割合（仮定）
カジノ税・納付金 30.0%
運営コスト（人件費、維持費など） 35.0%
コミッション・マーケティング 10.0%
減価償却費 15.0%
EBITDA（税引前利益） 10.0%
GGRの10%程度が最終的な利益として残る構造は、巨大な初期投資を回収するためには、いかに効率的かつ大規模な集客が必要かを示しています。
5. まとめと日本のIR収益への期待
カジノ収益、すなわちGGRは、単にギャンブルが生み出す数字ではなく、IR全体の経済効果、地方創生、そして国際観光振興の可能性を秘めた重要な指標です。
私は、日本のIRが高収益を実現し、地域に貢献するためには、以下の要素が不可欠だと考えています。
非ゲーミング収益の最大化: MICEや質の高いエンターテインメントにより、年間を通して安定した収益源を確保する。
国際競争力: アジアの富裕層だけでなく、欧米からの観光客も魅了できる「日本独自の魅力」を収益構造に組み込む。
効率的な運営: 高い税率を乗り越えるための、徹底したコスト管理と運営効率化。
大阪や今後検討される地域において、IRが世界基準の収益力を発揮し、日本経済の起爆剤となることを私は強く期待しています。
FAQ：カジノ収益に関するよくある質問
Q1. カジノの「ハウスエッジ」とは何ですか？
A. ハウスエッジ（House Edge）とは、カジノゲームにおいて、長期的に見てカジノ側が設定している数学的な優位性のことです。例えば、ハウスエッジが2%であれば、理論上、プレイヤーが100万円賭けた場合、カジノ側は平均して2万円を収益として得る設計になっています。
Q2. GGRと純利益の違いは何ですか？
A. GGRは「カジノ総収益」、つまり賞金支払い後のカジノの手取り額の合計です。純利益（Net Profit）は、GGRから税金、人件費、運営費、減価償却費など全てのコストを差し引いた、最終的に事業者に残る利益のことです。
Q3. 日本のIRのカジノ税率はどれくらいですか？
A. 日本のIR実施法では、カジノ収益（GGR）に対して国に30%、地方自治体に15%の計45%の納付金（税金に相当）が課せられることが定められています。これは国際的に見ても非常に高い水準です。