(Blackjack Insurance: Is it really protection? The reason I avoid it and the mathematical truth)
ブラックジャックのテーブルに座っている時、あの独特の緊張感はたまりませんよね。ディーラーがカードを配り、自分の手に最高の2枚が来たときの高揚感。そして、その高揚感を一瞬で打ち砕くかもしれない、ディーラーの「エース」のアップカード。
そんな時、ディーラーは必ずこう尋ねてきます。
「インシュランスはいかがですか?(Insurance?)」
「インシュランス(保険)」という言葉を聞くと、誰もが「リスクを回避できる」という安心感を覚えるものです。特に自分の手札が良い場合、「保険に入っておけば、ディーラーがブラックジャックでも引き分けになる」と考えてしまいがちです。
しかし、プレイヤーの皆さんに正直にお話しします。私はカジノで何千回とブラックジャックをプレイしてきましたが、この「インシュランス」という名のサイドベットをすることは、ごく稀な例外を除いて絶対にありません。
なぜ、保険という名のついたベットを、私が避けるのか?今日は、フレンドリーな視点から、その数学的な裏側と私の戦略を皆さんにお伝えしたいと思います。
1. 「インシュランス」とは何か?その仕組みを解説
まず、基本のおさらいです。「インシュランス」とは、自分のメインベットを保護するためのものではありません。これは、「ディーラーのホールカード(伏せられたカード)が10点の価値を持つカードであり、ディーラーがブラックジャックになる」ことに対して行う、独立したサイドベットです。
インシュランスの基本的な流れ
インシュランスのオファーがあるのは、ディーラーのアップカードが「A(エース)」の場合のみです。
賭け金: メインベット額のちょうど半額(1/2)をベットします。
配当: 2対1 (2 to 1) です。
結果のパターン:
ディーラーがブラックジャックになった場合(成功):
インシュランスの賭け金が2倍になって戻ってきます。
メインベットは負けとなります(プッシュでない限り)。
結果的に、インシュランスで勝った額が、メインベットで失った額の半分を相殺するため、全体としては「損益なし(±0)」となることが多くなります。
ディーラーがブラックジャックにならなかった場合(失敗):
インシュランスの賭け金は没収されます。
メインベットは通常通り継続されます。
この流れだけを見ると、「もしもの時のための備え」のように感じられますが、ここで重要なのは、このベットがプレイヤーにとって本当に有利なのかどうかという点です。
2. 数学が語るインシュランスの真実(なぜ損か?)
インシュランスは「2対1」という魅力的な配当を提供しますが、この配当は、ディーラーがブラックジャックになる確率と釣り合っていません。
ポーカーやブラックジャックの確率論において、古典的な表現があります。有名なギャンブルの専門家エド・ソープ博士の言葉を借りるまでもなく、確率はカジノの設計における基本原則です。
“The house advantage is built on the simple fact that the payout odds are always slightly less than the true odds of winning.”
(ハウスのアドバンテージは、「配当のオッズが、勝利の真のオッズよりも常にわずかに低く設定されている」という単純な事実に構築されている。)
まさにインシュランスはこれに当てはまります。
カード構成と確率の分析
標準的なトランプのデッキ(52枚)のうち、10点と数えられるカード(10, J, Q, K)は合計で16枚あります。
ディーラーがエースを見せている状況で、ホールカードが10点のカードである確率はどれくらいでしょうか?ここでは、多デッキ(例えば6デッキ)を使用した一般的なカジノの状況を想定して計算してみましょう。
カードの種類 枚数(6デッキ312枚中) 確率(理論値)
10点カード (T, J, Q, K) 96枚 30.77%
それ以外のカード (A, 2-9) 216枚 69.23%
ディーラーがBJになる確率 – 約30.77%
【表:インシュランスの真のオッズ vs 支払われる配当】
項目 確率に基づく真のオッズ インシュランスの配当
成功 (BJになる) 約 1 : 2.25 2 : 1
失敗 (BJにならない) 約 2.25 : 1 –
真の確率では、「成功」する確率は約30.77%です。これは、約3.25回に1回という割合です。
しかし、配当は「2対1」です。つまり、あなたが3回保険をかけて、そのうち1回(確率通り)成功したと仮定すると:
ベット 1 (失敗): -1 ユニット
ベット 2 (失敗): -1 ユニット
ベット 3 (成功): +2 ユニット (元本回収で実質 +1 ユニット)
合計損失: -1 ユニット
繰り返し行うと、プレイヤーは長期的に見て**約7.4%**の確率で損をするように設計されています。この7.4%という数字は、ブラックジャックのゲーム自体のハウスエッジ(通常0.5%~1%程度)と比較しても、非常に高い数値です。
3. 私の戦略:強い手札でも保険はかけない
友人から「手札が20なのに、ディーラーがエースだったら保険をかけたくならない?」と聞かれることがあります。気持ちはよく分かります。なぜなら、20という強い手札が、ディーラーのBJによってプッシュ(引き分け)で終わってしまうのは大変悔しいからです。
しかし、私は20であっても、18であっても、ダブルダウン後であっても、インシュランスはかけません。
なぜ私は断るのか?
新たな損失リスク: インシュランスはメインゲームとは関係のない、独立した「サイドベット」です。このサイドベットは、本来負ける必要のない状況で、あなたの手元のチップをさらに危険にさらします。
ハウスエッジの許容範囲: 前述の通り、インシュランスのハウスエッジは非常に悪いです。私が基本的な戦略(ベーシックストラテジー)を忠実に守り、ハウスエッジを0.5%に抑えようと努力しているのに、わざわざ7.4%の負け戦に手を出す理由はありません。
規律の維持: カジノゲームにおいて最も大切なことの一つは「規律」です。一時的な感情(20が負けることへの恐怖)で、数学的に不利な行動をとることを許容し始めると、他の局面でも誤った判断をしやすくなります。
私は、ブラックジャックの醍醐味は、自分の戦略を信じて確率の低い勝利を目指すことだと考えています。数学的に不利な「保険」は、その醍醐味を損ない、チップを削るだけなのです。
4. 例外:カードカウンターの場合
インシュランスが唯一、プレイヤーにとって有利になる状況があります。それは、あなたが**カードカウンター(カードを数える人)**である場合です。
山札の中に残っている10点カードの割合が、全体のカードの割合よりも著しく高くなっているとき、ディーラーがブラックジャックになる確率は33.3%(3回に1回)を超えます。
【インシュランスが有利になる条件】
残りのカードの中で、10点カードが総カードの正確に1/3(33.3%)以上を占めている場合。
この稀な状況下でのみ、インシュランスは期待値がプラス(+EV)のベットに変わります。
しかし、これは高度な技術であり、一般のカジュアルプレイヤーが狙えるものではありません。私たちが週末に楽しむレベルのブラックジャックでは、この例外を考慮する必要はないでしょう。
5. まとめとFAQ:賢くブラックジャックを楽しむために
ブラックジャックの「インシュランス」は、その名前に反して、プレイヤーにとっての「保険」ではありません。それは、カジノ側がプレイヤーの不安につけ込んで設計した、非常に高いハウスエッジを持つサイドベットなのです。
インシュランスを断る勇気こそが、長期的にブラックジャックで成功するための第一歩だと、私は信じています。
私があなたに残したい3つのポイント
インシュランスはサイドベットである。 メインのゲーム結果を保証するものではない。
インシュランスのハウスエッジは非常に高い。 (約7.4%)
カードカウンターでない限り、常に「No」と言うこと。
よくある質問(FAQ)
Q1: ディーラーがAを見せているとき、インシュランス以外の選択肢はありますか?
A: はい、スタンダードなベーシックストラテジーに従ってプレイを継続するだけです。ディーラーのブラックジャックを恐れるより、自分の手札の最適なプレイ(ヒット、スタンド、スプリット、ダブルダウン)に集中しましょう。
Q2: 自分の手札がブラックジャックだったら、インシュランスはするべきですか?
A: BJを持っている状態でインシュランスのオファーがあった場合、それは「イーブンマネー(Even Money)」を提案されているのと同じです。配当2:1でBJの負けを相殺し、結果的に1:1の配当で確実に勝つというものです。数学的には、これもインシュランスと同様に不利なベットであり、断るのが正解です。
Q3: インシュランスに勝つと、メインベットは自動的にプッシュになりますか?
A: いいえ。インシュランスの勝敗はメインベットとは独立しています。インシュランスに勝ったとしても、もしあなたの手がディーラーの21(BJでない場合)に負けていれば、メインベットは失われます。