こんにちは、釣り好きの皆さん!そして、今日初めて「ベラ」という魚の名前を聞いた方もいるかもしれませんね。
私にとって、ベラ(キュウセン)は特別な魚です。なぜなら、私が釣りを始めた頃、最も頻繁に遊んでくれた、文字通り「先生」のような存在だからです。一般的に、ベラは「雑魚」として扱われることも多く、「外道」扱いされてしまう不遇な魚でもあります。しかし、私は声を大にして言いたいのです。
ベラを侮るなかれ!
その鮮やかな色彩は海中の宝石であり、そして何より、適切な処理をすれば、釣り人が知る最高の白身魚の一つに変貌する、隠れた絶品食材なのです。今回は、私が長年愛してやまないベラの魅力と、その釣りの楽しみ方、そして驚くべき食味について、熱く語らせていただきます。
1. 私とベラの出会い:七色の誘惑
私のベラ釣りデビューは、穏やかな漁港のテトラポットの上でした。小さなブラクリ仕掛けにオキアミを付け、足元に落とすだけで、すぐに「ククッ」という心地よいアタリ。上がってきたのは、目が覚めるような鮮やかな赤や青緑の魚体。これがベラです。
ベラは日本全国の沿岸部に広く生息しており、その派手な見た目から「キュウセン」と呼ばれることが多い魚です。彼らの生態は非常に興味深く、その魅力は尽きません。
ベラの驚くべき生態
ベラはただ美しいだけでなく、生物学的に非常にユニークな特徴を持っています。特に特徴的なのが「性転換」です。
幼魚期・雌(メス): ほとんどのベラは最初はメスです。体色は赤っぽいものが多く、「アカベラ」と呼ばれます。
雄(オス)への転換: 成長し、群れのリーダー的な存在になると、性別がオスへと転換します。体色は青緑や緑色に変化し、非常に美しい婚姻色を見せます。こちらは「アオベラ」や「テツ」と呼ばれます。
このドラマチックな色の変化こそが、ベラ釣りの醍醐味の一つです。同じ場所で釣っていても、今日はアカベラ、次はアオベラ、と次々に違う色を楽しませてくれるからです。
2. ベラ釣りのいろは:手軽さが魅力
ベラは非常に貪欲で、釣り方を工夫する必要があまりなく、初心者でも手軽に楽しめるのが最大の魅力です。私も子供の頃は、父親から譲り受けたボロボロの竿で、ベラ釣りに夢中になっていました。
ベラが好む場所
ベラは砂地と岩礁が混在する場所を好みます。
場所 特徴
漁港の足元 砂とコンクリートの境目。最も手軽に狙える。
防波堤の際 潮通しが良い場所の岩礁帯周辺。大型が潜む。
投げ釣り 遠投した先の砂地。カレイ狙いの外道として釣れることも。
おすすめのタックル(仕掛け)
ベラ釣りは繊細なアタリを楽しむのがコツです。大掛かりな道具は必要ありません。
項目 おすすめのスペック 備考
竿 1.8m〜2.4mのルアーロッドまたは万能竿 持ち運びやすく軽量なものが最適。
リール 小型スピニングリール(1000〜2000番) PEまたはナイロン2〜3号。
仕掛け 胴付き仕掛け、またはシンプルな天秤仕掛け 針は流線形やキス針で7号前後。
餌 青イソメ、ゴカイ、オキアミ 食いつき抜群なのは青イソメの細切り。
ベラはアワセが遅れると餌だけ取っていくことが多いので、アタリを感じたらすぐに竿を立てる「即アワセ」を意識すると釣果が伸びますよ。
3. 意外な食味:ベラを味わい尽くす
さて、ここからが本題です。ベラが「雑魚」扱いされる最大の理由は、そのヌメリと独特の臭みにあります。しかし、私は断言します。それは、ベラのポテンシャルを最大限に引き出せていないだけです。
「新鮮なベラは、フグに匹敵するほどの旨味を持つ」と、ある老舗の料理人が言っていたのを、私は今でも覚えています。
ベラを絶品に変えるための鉄則はただ一つ、「徹底的な下処理」です。
ベラは生命力が非常に強く、釣った後も活きが良いのですが、これが臭みの原因でもあります。釣ったらすぐに締めて、氷で冷やし、そして帰宅後すぐに処理に取り掛かることが重要です。
必須の下処理ステップ
ヌメリを取る: 鱗(うろこ)を取る前に、熱湯をさっとかけて(湯霜)、すぐに冷水で冷やし、包丁の背でヌメリを徹底的にこそぎ落とします。
臭みの元を断つ: 内臓を丁寧に取り除き、腹の中の血合いも歯ブラシなどで綺麗に掃除します。
三枚おろし: 小骨が多い魚なので、加熱料理にしない場合は三枚におろし、皮を引きます。
この手間を惜しまなければ、ベラの素晴らしく透明感のある白身が現れるのです。
4. 私のおすすめ!ベラを最高に楽しむレシピ
ベラの身は、クセがなく締まっており、加熱しても身崩れしにくい特徴があります。小骨が多いので、骨切りをするか、骨ごと楽しめる調理法が人気です。
ここでは、私が自信を持っておすすめするベラ料理をご紹介します。
絶品ベラ料理リスト
ベラの塩焼き (Shioyaki): 最もシンプルで、ベラの旨味をストレートに味わえます。ヌメリを完璧に取っていれば、皮ごと香ばしく焼けて最高です。
ベラの天ぷら/フライ: 小さめのベラでも骨ごと揚げてしまえば、骨煎餅のような食感で楽しめます。ふっくらとした身とサクサクの衣のハーモニーは絶品です。
ベラの刺身(昆布締め): 大型(アオベラ)が釣れた時限定!三枚におろし、薄造りにして一晩昆布で締めます。身が透明感を増し、強烈な甘みが生まれます。これは本当にフグにも負けないレベルです。
ベラ飯(炊き込みご飯): 丁寧に処理したベラを丸ごと(または切り身を)入れて炊き込むと、魚の出汁がご飯に染み込み、滋味深い味わいになります。
特に、ベラの刺身は、ベラに対する評価を180度変える破壊力があります。手間をかけた分だけ報われる、最高の贅沢です。
まとめ:ベラに捧げるエール
ベラが「雑魚」と呼ばれる時代は、もう終わったのではないでしょうか。
手軽に釣れて、私たち釣り人に多くの楽しみを与えてくれるだけでなく、その身は丁寧に扱えば最高のご馳走に変わります。
私にとってベラは、「釣りの楽しさ」と「食の喜び」の両方を教えてくれた、忘れられない存在です。もし、次回の釣行でベラが釣れたら、リリースせずに、ぜひ持ち帰って下処理を試してみてください。
きっと、その色鮮やかな魚体の中に秘められた、白く美しい身と、驚きの旨味に出会えるはずです。ベラ釣りの魅力を多くの人に知ってもらい、磯の宝石として愛される日が来ることを願っています。
Q&A:ベラに関するよくある質問 (FAQ)
Q1: ベラはいつの季節が一番美味しく釣れますか? A: ベラは水温が高い時期に活発になりますが、最も身が締まって美味しくなるのは、産卵を終えて体力を回復した**晩秋(10月〜12月頃)**です。冬場は深場に移動するため、初夏から秋にかけてが釣りのベストシーズンです。
Q2: ベラは本当に臭いのですか? A: 適切な処理をしないと、独特のヌメリと内臓(特に肝)からくる臭みがあります。この臭みは「鱗とヌメリの除去」「内臓と血合いの徹底除去」を行うだけで、ほぼ完全に消すことができます。臭いが気になるときは、塩焼きにする前に塩を振ってしばらく置き、出てきた水分を拭き取る「振り塩」処理も有効です。
Q3: ベラの鱗は取りにくいですか? A: ベラは鱗が硬く、密集しているため、普通の包丁では剥がれにくいです。鱗を飛び散らせないために湯霜(熱湯をかける)処理をしてから剥がすか、ペットボトルや専用のウロコ取り器を使うと効率的です。
Q4: ベラはどこで釣るのが一番簡単ですか? A: 堤防や漁港の「底」を狙うのが最も簡単です。砂地と岩礁が混ざる浅場を好むため、オモリを海底に付けた状態で、餌を少しずつ引きずる「引き釣り」を試すと、高確率でアタリがあります。